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スキー人気、なぜ復活?

スキー場の最寄り駅であわてて切符を探すパッとしない若い男。でも、ゲレンデでスキーウェアに着替えると、別人のようにカッコよくなり、颯爽と白銀の斜面を駆け下りていく。女の子はその姿を見つめ、思わずつぶやくのだ。「えっ、なに? これがゲレンデマジック」――。

長いあいだ低迷していたスキー人気が復活しつつある。それを象徴しているのが、昨シーズンから6年ぶりに再開されたJR東日本のスキー旅行キャンペーン「JR SKISKI」のこのCMだ。本田翼が出演した昨季に続き、今シーズンは「ぜんぶ雪のせいだ。」をキャッチコピーに若手女優の川口春奈を起用、スキー場での恋愛模様を描いて話題になっている。こうやってスキーがクローズアップされるのは、ここ最近なかったことだ。

スキー人気の回復は数字にも明確に表れている。苗場スキー場(新潟県)はこの1月~3月のホテルの予約状況が前年同期比10%増となり、長野県・志賀高原の19のスキー場も年末年始の利用客が前年同期に比べて10%以上増加したという。同県の白馬八方尾根スキー場は13%増で、野沢温泉スキー場も5%増。さらに、北海道を見ても、ニセコ地区のニセコグラン・ヒラフスキー場の12月の利用客は前年同月比で15%も増加して約8万人となり、ルスツリゾートも15%増、富良野スキー場にいたっては増加率が20%にも上る。長野県や北海道など、国内の主なスキー場の利用客が軒並み1~2割増えているのだ。このため、各スキー場の業績もアップ。八方尾根や岩岳、竜王をはじめ、白馬地区を中心に多数のスキー場を経営する「日本駐車場開発」は、今期のスキー事業の売上高が倍増し、営業利益は2.5倍になったという。

なぜスキー人気が復活しつつあるのか。

その理由のひとつといわれるのが、かつてバブル景気の時代(1980年代後半~90年代初頭)に大学生や高校生としてスキーに夢中になっていた世代が40歳前後となり、子どもを連れて再びゲレンデに戻ってきたという見方だ。日本生産性本部の「レジャー白書」によると、スキー人口が最も多かったのは20年前の1993年で、約1860万人。原田知世主演の映画『私をスキーに連れてって』(東宝)が87年に公開され、それをきっかけに空前のスキーブームが沸き起こってから5年後ぐらいのこと。その後、景気が悪くなり、人口が減少に転じると、スキー人気も低迷。特に2010年には、スキー人口は570万人にまで激減してしまったのだ。

とはいえ、バブル世代が親になったというだけで、そう簡単にゲレンデに人が戻ってくるはずがない。なにしろスキーは用具やウェアにお金がかかるし、スキー場に行くだけでも大変なのだ。人気回復の一番の理由は、むしろ、スキー業界全体の取り組みの成果だといわれる。

●関連業界の地道な努力

じつは、スキー業界ではこの間、ゲレンデに人を呼び戻すためにさまざまな策を打ち出してきた。JR東日本がスキー旅行キャンペーンを復活させたのに加え、ANAセールスも「大人のスキーリゾート北海道」という旅行商品を発売。また、各スキー場をはじめ、ホテル、地元の観光協会は、スキー道具やウェアの無料レンタル、リフト無料券、自転車型そりの無料レンタル、子ども向けのスキー教室の実施するなど、あの手この手でサービスを拡充させ、ファミリー層の取り込みに必死になってきたのである。

さらに、北海道のリゾート型スキー場は外国人客の割合が多いため、その対応やサービスにも力を入れている。ニセコ グラン・ヒラフスキー場では案内板の英語表記を増やし、外国人の従業員も昨シーズンから15人増員。ルスツリゾートは無料でネット利用できるWi-Fiも導入した。こうした取り組みが評価されたのか、この正月明けにはキャロライン・ケネディ駐日大使が家族でニセコ地区を訪れ、スキーを楽しむ様子をツイートして話題にもなった。

しかし、だからといって、スキー人気がこのまま復活するとはかぎらない。日本人口は減り続けているし、景気の先行きは不透明。テーマパークなど、レジャー施設もほかにたくさんある。スキー人気は回復傾向に向かいつつあるものの、業界に見えてきたのはまだ薄明かりにすぎないのだ。

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